ORAL CANCER

口腔がんと
間違えやすい口の中の病気

口の中にもがんはできますが、「がんかもしれない」と心配して来院される方の多くは、実際にはがんではありません。ここでは、がんと間違えやすい良性の病変と、本当に注意すべき前癌病変・口腔がんの見分け方を写真とともにご紹介します。

口の中にもがんはできます。代表的なのは舌がんで、歯肉にできるがんも当然あります。また、組織の内部にできる(非上皮性と言います)肉腫というものも、がんより頻度は低いですがあります。歯科医院でも3年に1度くらいは、がんを思わせる病変にお目にかかりますが、心配して来院される方のほとんどはがんではないことが多いです。口の中のがん(口腔がん)は体の表面にできているものが多く、実際に目で見ることができますので、見て、触れば大体の見当はつきます。ここでは、がんができたとあわてふためくものの、がんではないパターンの代表例をご紹介します。

健康な舌(舌がんとの違い)

健康な舌の写真。舌の根元(奥)に有郭乳頭や舌扁桃によるボコボコとした凹凸がみられるが、これは正常な状態
健康な舌。舌の根元のボコボコは正常な構造(有郭乳頭・舌扁桃)です

これは健康な舌です。でも舌の根元をみると結構ボコボコしていますので、ある日突然、鏡で舌をみたらその姿に驚いて、がんだと思いこむ人が多いです。神経質な人や、身内や知り合いが舌がんになった話を聞いて、自分の舌をみたら、へんてこりんなボコボコがあるので、びっくり仰天して、どこかの口腔外科や歯科に駆け込んでこられることも多いようです。

舌のがんができるのは、舌の横と相場が決まっています。舌の上面にできることは稀です。血相を変えていらっしゃる方の多くは、舌の奥にある味をつかさどる器官の有郭乳頭や、だれにでもある舌扁桃のことが多いです。

ただし、口腔がんの5割以上は舌がんです。日本では年間3千人から4千人が罹患していますので、舌に何か"しこり"のような物ができたり、治りにくい傷がある場合は、絶対に放置しないで口腔外科を受診することが大事です。また、日ごろから歯科を受診する場合には舌の検診も受けておくことが重要です。後述しますが、タバコはがんの引き金を引く可能性がありますのでやめましょう。

舌に"しこり"がある。絶対に放置をしてはなりません。

下顎隆起(かがくりゅうき)

これは、下顎隆起というただの骨の出っ張りです。下顎の歯の内側の土手の骨は出っ張ってくることがありまして、特に左右対称ではないことが多く、大きさもパチンコ玉のひとまわり小さくしたものや、山芋みたいな形をしたものまでよくみかけられます。こんな出っ張りがあったら気づきそうなものですが、意外にひょんなことから発見して、焦る人が多いらしく、恐る恐る、歯の治療の際に聞いてくる場合が多いです。当然、邪魔でなければこのまま放置しておいて良いです。あまりに大きくて舌の運動を阻害したり、歯が駄目になって入れ歯にした際に、入れ歯の端がその骨の出っ張りに当たって痛い場合には、削ることもあります。何でこんな出っ張りができるのかと言うと、咬む力が強い人の場合、歯を守るために骨を厚くしているとの説があります。

通常の下顎隆起の口腔内写真。下顎の歯の内側(舌側)の歯ぐきの土手に骨が左右非対称に膨らんでいる
通常の下顎隆起。下顎の歯の内側に骨が出っ張っています
大きい下顎隆起の口腔内写真。歯の内側の骨の膨らみが通常より大きく発達している
大きい下顎隆起の例
これまで当院で見た中で最大の下顎隆起の口腔内写真。歯の内側に山芋状の大きな骨の出っ張りがみられる
これまで見た中で最大の下顎隆起

ただし、短期に大きさの変化が見られるものや押して痛いもの、表面が正常な粘膜の色をしていない場合は、骨肉腫の可能性もなくはないですので、口腔外科を受診することをお勧めします。

なお、以下の場合は健康保険で取り除くことができます。

  1. 義歯の装着に際して、下顎隆起が著しい障害となるような場合
  2. 咀嚼または発音に際して、下顎隆起が著しい障害となるような場合

義歯の場合はあり得ますが、咀嚼や発音に際して障害になるような場合は稀です。なぜならば、急にできるわけではないからです。

口蓋隆起(こうがいりゅうき)

上顎の口蓋という部分に存在する出っ張り。出っ張りの正体は骨です。気がついていない人も多いのが現状です。義歯を入れる際に邪魔になる場合があります。また、発音がしづらいと感じられる場合もあります。このような場合は、健康保険を適応しての切除ができます。切除と言っても削り取ります。

口蓋隆起の口腔内写真。上あごの真ん中(口蓋)に骨が帯状に盛り上がっている
口蓋隆起。上あごの中央に骨の出っ張りがみられます

柔らかい場合は口蓋隆起ではありませんので、口腔外科の受診をお勧めします。また、大きさが急激に変化する場合も要受診です。

粘液のう胞(ねんえきのうほう)

これは、粘液のう胞。唇にできることが多く、子供から大人までによくみられます。簡単に説明しますと、唇には小唾液腺というゴマ粒大の少量の唾液を生産する組織が粘膜の直下にありまして、この出口に閉塞障害が起こりますと、このようにプクッと腫れた感じになります。具体的には、唇を噛んだりした場合が多いです。痛みもなにもありませんが、放置しておいても半分くらいは自然消滅しますが、再発を繰り返す場合や、周囲に炎症でも起きて硬くなったような場合、がんができたと思いこむ人が多いようです。

下唇にできた粘液のう胞の口腔内写真。粘膜の下に半透明でプクッと膨らんだ袋状の腫れがみられる
下唇にできた粘液のう胞。小唾液腺の閉塞でプクッと膨らみます

当院の場合は、3カ月程度経過観察をしても自然消滅しない場合は、少しメスで切開して、ゴマ粒大の小唾液腺ごと摘出します。小唾液腺は唇の下にはたくさんありますので、一個取ったところで何の障害も起こりません。ただし、摘出の際に運が悪いと、他の小唾液腺の閉塞障害を生じさせることがあって、再発(再発と言うより、お隣の小唾液腺から新しく生じる)してしまうこともあります。この写真のように、表面がツルっとしていなく、ボコボコだったりした場合は、口腔外科で診てもらいましょう。

以上が、歯科医院で良く見られる、がんだと思って驚いてやってくる患者さんのパターンです。次にお見せする映像は、注意を要する粘膜の変化です。

咬傷(こうしょう)

粘膜が白っぽくなって、やや硬い感じがありました。一見して、前癌病変の一つの白板症ではなかろうかと思ったのですが、患者さん曰く、しょっちゅうこうなってまた消える、とのことでしたので、1ヶ月、様子観察としましたら、不思議なことに、白い病変は何もなくなってしまいました。結果的には、ただの噛んだ傷だったようです。一般的には、このような物が口の中に生じて、痛みもなくて拡大傾向がある場合は、口腔外科で相談しましょう。

頬の粘膜にできた咬傷の口腔内写真。粘膜が白っぽくやや硬く変化しているが、白板症ではなく噛んだ傷であった
咬傷。白っぽい変化があるが、噛んだ傷で1ヶ月後に消失しました

* 参考 * 扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)

扁平上皮癌(口腔がん)の口腔内写真。当院初診時のもので、表面がボコボコと不規則に隆起し明らかに異常な病変がみられる
扁平上皮癌(当院初診時)。明らかに異常な病変です

上記は扁平上皮がんです(当院初診)。明らかに異常な感じがしますね。

口の中にできて、がんが疑われる場合のポイント

こんな所見はがんが疑われます

  • 明らかに周囲より出っ張っている。
  • 触っても痛みがない。
  • 粘膜の色が白っぽい。または白かったり赤かったりする部分がある。
  • 突然できたものではないが、何だか大きくなっている傾向がある。
  • できものの粘膜の表面がカリフラワーみたいにボコボコしている。

口の中にできる腫瘍は圧倒的に良性腫瘍が多いです。口腔がんは全てのがんの中での頻度は1〜2%程度と言われ、それほど多くはありません。ただし、日本では年間8千人程度が口腔がんになると言われ、年々増加しています。口腔がんは、胃がんや肺がんと違って、ほとんどの場合が直接見ることができます。しかし、もし口腔がんだった場合、小さければ摘出するだけで終わりますが、大きい場合は顔の皮膚や骨の一部を切り取る必要があり、その後に再建と言って機能や外観を治さなければならなくなり、その方の生活を大きく変えることがあります。

再建は胸の筋肉や、背中の筋肉、手の筋肉を使うことが多いので、お腹などのがんに比べて大きな手術になる場合が多く、形成外科と合同で手術をする場合もあります。

特に、某大学の先生によると、見えるところにできるのにもかかわらず、日本では2センチ以上の大きさになってから来院される方が8割だそうです。口腔がんは1センチと2センチ以上では手術の範囲、その後の機能の維持などに大きな違いが出ますので、もっと皆様が早く受診する必要があります。

当院での対応

当院では、口腔がんかどうかを臨床診断することはできます。ただし治療は大学病院や総合病院の口腔外科にご紹介いたします。また、メンテナンス(定期健診など)に来院されている患者さんは、歯科医師や歯科衛生士が、舌や粘膜に口腔がんを疑わせる病変がないかを簡易的にですが診ています。

口腔がんは、できるだけ早い発見と治療が必要です。

前癌病変 ― がんではないけれど、がんになる可能性のある疾患

白板症(はくばんしょう)

  • がんになる可能性は2〜5%。
  • 粘膜が白っぽくなった状態。こすってもとれない。
  • 中心部はやや硬いが、境界部が硬いのは良くない場合が多い。
  • 赤い部分と白い部分の混在は良くない場合が多い。
  • ステロイドをぬっても効果なし。
  • 症状により注意深い1か月毎の経過観察。それができないなら切除が望ましい。
  • 薄く剥がすオペなので、障害が出にくい。
  • 細胞診や組織診が必要。
  • 細胞診の場合、境界をこすってこないと中心部では正確な診断が出にくい。
  • 誘因は尖った歯、合わない義歯などの刺激がある。
  • タバコは特によくない。お酒もあまりよくない。

紅板症(こうばんしょう)

  • がん化する可能性は50〜60%。
  • 赤っぽいびらん性の病変。
  • 最初から痛い赤いびらんはあまり問題ない。
  • 1か月単位で変化してくる物はよくない。
  • 細胞診や組織診で診断。
  • 治療は、症状にもよるが、注意深い経過観察か切除。
  • 扁平苔癬などとの鑑別が必要。

ブリンクマン指数

1日のタバコの本数かける喫煙年数が600を超えると危険です。1日20本×30年で危険水域となります(肺がんは400だそうです)。

がん(癌)の診断

他のがんと違って、ほとんど見えますのでパッと見れば大体の診断はつきます。つまり、痛い検査もなく、受診したその日におおよその結果を聞けるということです。

診断を確定させるには、患部の組織を少し切り取って顕微鏡で細胞の形をみてもらう病理組織診断です。ただ、がんの場合、がん細胞にメスを入れると、その細胞が血液に乗って運ばれて他の組織に転移する可能性もなくはありません。そこで用いられるのが細胞診です。がんではないかと疑われる表面を歯ブラシのような器具でなでるだけですみます。病理組織診断よりは精度は落ちますが、メスを入れませんので転移させる心配もございませんし、痛みも全くありません。

当院では明らかにがんを疑う患者さんの場合は、提携病院口腔外科を紹介しておりますが、境界領域の場合は、病理組織検査を実施いたします。なお、細胞診も行っております。細胞診に関しては検体を送って診断をしてもらいますが、現在(2023年)では東京歯科大学に紹介をしています。

がんに似た疾患として肉腫があります。同じ悪性腫瘍ですが、がんは粘膜などの表面にできるものを言うのに対して、肉腫は組織の内部に生じる(非上皮性の)悪性腫瘍をそう呼びます。口腔領域では、顎の骨にできる骨肉腫が代表例です。当然、骨の内部から発生しますので、ある程度腫れて気が付く場合と、歯科医院において撮影したレントゲンに偶然に映った陰影により発見される場合があります。この骨肉腫はがんよりは転移の傾向が強いので、早期発見が大事です。

気になる症状は、早めにご相談ください

口腔がんは、早期に発見できれば体への負担を小さく抑えられます。舌や粘膜に治りにくい傷やしこり、白い・赤い変化がある場合は、放置せずに一度ご相談ください。当院では臨床診断を行い、必要に応じて専門病院の口腔外科へご紹介いたします。

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お口の気になる症状、ご相談ください

舌や粘膜の治りにくい傷・しこり・色の変化は、早期発見が大切です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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