治療が終わったお口を、もう一度悪くしないために。歯科医院での清掃に頼るだけでなく、ご自宅で毎日きちんと磨けているかをプロの目で確かめ、足りないところを補う——それが当院のメンテナンスです。定期的に通われている患者様のお口の中は、非常に良好な状態が保たれています。
メンテナンスの重要性(医学的エビデンス)
定期的な歯科メンテナンスは、虫歯や歯周病の予防だけでなく、全身の健康維持においても非常に重要な役割を果たします。
全身疾患の予防・改善
厚生労働省をはじめとする公的機関・医学研究においても、お口の清掃と管理を行うことで「誤嚥性肺炎の予防」や「糖尿病の症状改善」につながることが示されており、国としても強力に推進されています4・5。
- 誤嚥性肺炎の予防——全国11か所の高齢者施設で行われた研究では、毎食後の歯みがきと週1回の専門的な口腔ケアを2年間続けたグループの肺炎の発症は11%、行わなかったグループは19%でした。肺炎で亡くなった方の割合も、ケアを行ったグループで半分以下でした3。
- 糖尿病の改善——歯周病と糖尿病は、お互いに悪影響を及ぼし合う関係にあります。糖尿病のある方の歯周病を治療すると、血糖コントロールの指標であるHbA1cが平均0.43ポイント下がることが、35の臨床試験(3,249人)を統合した分析で示されています6。
- 厚生労働省のe-ヘルスネットでも、歯周病が心疾患・慢性腎臓病・呼吸器疾患・早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連していることが紹介されています4。
継続的なケアの必要性
コロナ禍でメンテナンスを控えざるを得なかった患者様が再開された際、口腔内環境の悪化が顕著に見られた経験からも、継続的なお口の管理がいかに大切であるかを再認識しております。定期的に通われている患者様のお口の中は、非常に良好な状態が保たれています。
これは当院だけの印象ではありません。歯周病の治療を終えたあと、「きちんとメンテナンスに通った人」と「通ったり通わなかったりした人」を5年以上追跡した8つの研究を統合すると、きちんと通った人は歯を失うリスクが0.56倍——通わなかった人の方が約1.8倍、歯を失いやすいという結果でした2。
歯を残すためのエビデンス
30年で失った歯は平均1本前後(スウェーデンの長期研究)
メンテナンスの効果を示す最も有名な研究は、スウェーデンのアクセルソン(Axelsson)らが行った30年間の追跡調査です1。1972年に始まり、歯科衛生士による専門的クリーニングと歯みがき指導を、最初の2年は2か月ごと、その後は一人ひとりの状態に合わせて3〜12か月ごとに続けました。
30年後、参加者が失った歯は年齢層ごとに平均0.4〜1.8本。失った歯の主な原因は歯の根の破折で、歯周病やむし歯で失った歯は全体で21本だけでした。さらに、新しく見つかったむし歯の約80%は「治した歯の再発」でした。治療した歯ほど、定期的なチェックが欠かせない理由です。
歯を失う原因の1位は歯周病
日本人が歯を抜くことになった原因を調べた全国調査(8020推進財団、2018年)では、1位が歯周病(37.1%)、2位がむし歯(29.2%)、3位が歯の破折(17.8%)でした7。歯周病は痛みがほとんどないまま進むため、ご自身では気づきにくく、定期的な検査が最も確実な対策になります。厚生労働省の調査では、15歳以上の47.9%に4mm以上の歯周ポケットがありました8。
一方で明るい数字もあります。80歳で20本以上の歯を残す「8020」の達成率は、2024年の調査で61.5%に達しました(2022年は51.6%)9。「悪くなってから行く」から「悪くならないように通う」へ、歯科の受け方が変わってきています。
当院のメンテナンス内容
当院では常勤25名以上の歯科衛生士が在籍し、歯科医師とのダブルチェック体制のもと、手厚く質の高いメンテナンスを提供しています。治療が終わった方のメンテナンスは2階のメンテナンス専用スペースで行い、ユニット4台すべてに設置したドイツ製のマイクロスコープを歯科衛生士も使用します。
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お口全体の総合検査
歯科医師・歯科衛生士が、歯周ポケットの測定、虫歯の有無、かみ合わせの状況、歯肉の状態などを確認します。さらに、舌などの粘膜に口腔がんなどの兆候がないかも綿密にチェックします。
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日常のブラッシングチェック
歯科医院での清掃に頼るだけでなく、ご自宅で日常的にしっかり磨けているかをプロの目線でチェック・指導いたします。磨き残しの出やすい場所をお伝えし、歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスの使い方や歯みがき剤の選び方をご提案します。
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歯石除去・歯面研磨
付着した歯石や着色汚れの除去を行い、歯の表面(歯面)を丁寧に研磨してツルツルに仕上げます。超音波スケーラーと、細かなパウダーを吹きつけるパウダーメンテナンス機器で、歯を削らずに歯石・歯垢・着色を落とし、マイクロスコープで取り残しがないか確認します。
所要時間は1回30分です。長く口を開けていただく負担がないよう、30分の枠に収まる内容で組み立てています。検査で歯科医師の診察が必要な変化が見つかれば、その場でご案内します。
セルフコントロールを重視する理由
30年研究のポイントは、クリーニングそのものより、「自分で磨けているか」を毎回確かめて教えることにありました1。歯科医院でのケアは数か月に1回、ご自宅のケアは毎日です。毎日の質を上げることが、いちばん歯を守ります。
来院の間隔について
「3か月に1回」と一律に決まっているわけではありません。ヨーロッパ歯周病学会の治療ガイドライン(2020年)は、歯周病の治療後のメンテナンスを患者様のリスクに応じて3〜12か月ごとに行うよう推奨しています10。先ほどの30年研究も、同じく3〜12か月の間隔でした1。
一方、歯周病がなくむし歯のリスクも低い成人については、英国の大規模な臨床試験とコクラン・レビューで、「6か月ごと」と「リスクに応じた間隔」「24か月ごと」を比べても、4年間でむし歯や歯ぐきの出血に大きな差がなかったことが報告されています11。つまり、間隔は一律ではなく、一人ひとりの状態で決めるのが科学的です。
| お口の状態 | 来院間隔の目安 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 歯周病の治療が終わった直後 | 1〜3か月 | 歯ぐきの検査、歯石除去、みがき方の確認 |
| 歯周病が安定している方 インプラント・かぶせ物が多い方 | 3〜4か月 | 歯周ポケット検査、クリーニング、インプラント周囲の確認 |
| 治療した歯が少なく、歯ぐきも健康な方 | 6か月 | むし歯・歯ぐきのチェック、クリーニング、フッ素 |
| むし歯・歯周病のリスクが低い方 | 6〜12か月 | 定期チェック、クリーニング |
※上の表は一般的な目安です。実際の間隔は、検査結果や生活習慣(喫煙・糖尿病など)をふまえて歯科医師・歯科衛生士がご提案します。
診療・費用についてのご注意
メンテナンスは、基本的には健康保険の枠内で行います。一部負担金(3割負担の方)は、おおよそ3,000円程度です。
- 汚れを除去するためのパウダーメンテナンスなどは、保険診療内で行うことが可能です。
- 頑固な歯の着色除去など、審美・美観の向上を主な目的とする着色除去につきましては、保険適用外(自費診療)となりますので、ご承知ください。
くわしくは治療費用のページもご覧ください。
よくあるご質問
Q. クリーニングは痛くありませんか?
歯ぐきが腫れている部分は、器具が触れるとしみたり、少し痛んだりすることがあります。痛みが強い場合は麻酔を使うこともできますので、遠慮なくお伝えください。メンテナンスを続けて歯ぐきが引き締まってくると、痛みはほとんどなくなります。
Q. 他の医院で治療した歯でも大丈夫ですか?
はい。転居などで通院先を変えられる方も多くいらっしゃいます。初回はお口全体の検査から始めますので、ネット予約では「初診」をお選びください。
Q. 子どもも受けられますか?
お子さまの定期管理(フッ素塗布・シーラント・仕上げみがきの指導)は小児歯科で行っています。ご家族で同じ日に受診いただくことも可能です。
Q. しばらく通えていませんでした。また行ってもいいですか?
もちろんです。間隔が空いてしまった方も、そこから再開すれば問題ありません。コロナ禍で中断された方の多くが、再開後に良い状態を取り戻されています。お気軽にご連絡ください。
参考文献
- Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. Journal of Clinical Periodontology. 2004;31(9):749-757. スウェーデンの1つの歯科医院で375人を30年間追跡。歯科衛生士による専門的クリーニングと、自己診断・セルフケアの教育を、最初の2年は2か月ごと、その後は3〜12か月ごとに実施。30年間で失った歯は年齢層ごとに平均0.4〜1.8本、歯周病・むし歯が原因で失った歯は全体で21本のみ。新しいむし歯の約80%は治した歯の再発(二次う蝕)。
- Lee CT, Huang HY, Sun TC, Karimbux N. Impact of Patient Compliance on Tooth Loss during Supportive Periodontal Therapy: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Dental Research. 2015;94(6):777-786. 歯周病治療後のメンテナンスについて、5年以上追跡した8研究を統合。きちんと通った人は、通ったり通わなかったりした人に比べ、歯を失うリスクが0.56倍(95%信頼区間 0.38〜0.82)。
- Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. Journal of the American Geriatrics Society. 2002;50(3):430-433. 日本の高齢者施設11か所・417人を無作為に2群に分け、2年間追跡。毎食後の歯みがきと週1回の歯科衛生士等による専門的口腔ケアを行った群の肺炎発症は184人中21人(11%)、行わなかった群は182人中34人(19%)。肺炎による死亡も口腔ケア群で半分以下。
- 嶋﨑義浩. 口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連. 厚生労働省 e-ヘルスネット. 歯周病と糖尿病には双方向の関連があり、歯周治療によりHbA1cの改善が見られる。歯周病は心疾患・慢性腎臓病・呼吸器疾患・骨粗鬆症・関節リウマチ・がん・早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連していると報告されている。
- 内閣府. 経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針). 2022年6月閣議決定. 「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討」が盛り込まれ、口腔の健康が全身の健康につながるという考え方が国の方針として示された。
- Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2022;(4):CD004714. 糖尿病と歯周病のある成人を対象とした35の無作為化比較試験(3,249人)を統合。歯石除去などの歯周治療を行うと、治療しない場合に比べてHbA1cが3〜4か月後に平均0.43ポイント低下(中等度の確実性)。
- 公益財団法人 8020推進財団. 第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書. 2018年11月. 2018年6月に全国2,345名の歯科医師が報告した抜歯8,003本を集計。抜歯の原因は歯周病37.1%、う蝕(むし歯)29.2%、破折17.8%の順。
- 厚生労働省. 令和4年 歯科疾患実態調査 結果の概要. 2023年6月公表. 15歳以上で4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合は47.9%。65〜74歳では56.2%。
- 日本歯科医師会. 8020達成者率は61.5%へ増加(令和6年歯科疾患実態調査結果より). プレスリリース 2025年7月. 80歳で20本以上の歯を持つ人の割合は61.5%(前回2022年調査は51.6%)。過去1年間に歯科検診を受けた人は63.8%。
- Sanz M, Herrera D, Kebschull M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. Journal of Clinical Periodontology. 2020;47(Suppl 22):4-60. ヨーロッパ歯周病学会(EFP)の診療ガイドライン。歯周病治療の第4段階として「サポーティブ・ペリオドンタル・ケア(メンテナンス)」を位置づけ、リスクに応じて3〜12か月の間隔で継続することを推奨。
- Fee PA, Riley P, Worthington HV, Clarkson JE, Boyers D, Beirne PV. Recall intervals for oral health in primary care patients. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020;(10):CD004346. 英国のINTERVAL試験(成人1,736人・4年間)を含むコクラン・レビュー。歯科医院に通っている一般の成人では、「6か月ごと」「リスクに応じた間隔」「24か月ごと」のあいだで、むし歯・歯ぐきの出血・口に関する生活の質に大きな差はなかった(中〜高い確実性)。間隔は一律ではなく個別に決めるべきという根拠。