数年前に神経を抜いた歯がズキズキ痛む、噛むと痛い、歯茎が腫れて膿んできた――このような症状にお悩みの患者様が、他の医院から当院を多数訪れています。治療後の痛みの多くは、不適切な抜髄処置に起因します。ここでは、根管治療後に起こるトラブルの原因と治療について解説します。
このような症状にお悩みはありませんか?
- 数年前に神経を抜いた歯がズキズキと痛み出した
- 神経を抜いたのに少し硬いものを噛んだとき痛い
- 歯の根の治療後、歯茎が腫れてきた・膿んできた
- 温かいもの・冷たいものを食すると数十分ほど痛くつらい
- 数か月たっても、なかなか治療が終わらない
このような症状に悩む患者様が多数、他の医院から当院を訪れています。
どうして、神経を抜いたのに痛むの?
たくさんの原因がありますが多くは、抜髄処置時のあまりよろしくない処置による事が多いです。一番多いのが空洞の残存。つまり歯髄を取り除いた後に、その空洞に人工物を詰め込むのですが、大きな空洞を残してしまった場合です。この空洞が細菌の温床となり歯の根の先から細菌などが漏れ出る事により、上記のような様々な不具合や咬むと歯が痛いような事になってしまうのです。
あと、もう一つは、歯の内面を削りすぎる事により、構造が弱くなり咬む力により歯の根が折れてしまっている場合も有ります。折れるのは根のどこの部分にも起こりえます。歯の根は歯槽骨と言う骨の中に埋まっています。その骨の中で歯の根が折れて、折れた部分に細菌感染を起こすことにより痛みが出てくるのです。歯槽骨の中で折れてしまった場合、原則的には抜歯です。日常診療において、インプラントになる患者さんの多くは根管治療の不備で歯根破折を来たした場合が実に多いのです。
用語の説明
- 抜髄……歯髄組織を取り除くこと
- 歯髄組織……いわいる神経のこと(血管・神経など)
- 根管治療……歯の神経(歯髄組織)を取り除き、根の中の空洞に人工物を詰め込んで安定させること
上手な歯の神経治療(根管治療)とは?
良好な根管治療には、次の5つの条件が必要です。
- 根先確認……歯の根の形は個人差があり曲がりくねっていますので診断をしっかり行うこと。歯科用のCTを術前に撮影をして根の立体的な形態を把握しておくこと。
- 抜髄……根の先までしっかり歯髄組織を取り除くこと。
- 根管形成……人工物を詰めやすい形に広げると共に、歯が弱くならないように削りすぎないこと。
- 細菌除菌……根管の中の細菌をできるだけ除菌してある事。
- 根管充填……根の先にある根先孔を塞ぐと共に、歯髄が存在していた空洞を完全に閉鎖すること。
根管治療(歯 根の治療)後のトラブルの原因
根管治療後に起こるトラブルには、主に次の6つの原因があります。それぞれについて解説します。
1、パーフォレーション(穿孔)
治療の際に、歯の内面から歯の外に向かって歯を削って穴を開けてしまうこと。歯の解剖学的な形態の把握不足の時に起こります。歯科用CTで歯を立体的に観察しておくことによりパーフォレーションは防げます。15年程度前までは、穿孔を起こすと予後不良で大抵は抜歯になってしまいました。しかし現在ではMTAセメントを使えばほぼ問題なく修復できる様になりました。穿孔直後でしか効果は無いかと思っていましたが、相当以前に穿孔しているケースにこのMTAを使ってもかなり有効であることが分かってきました。当院では、他院で穿孔したケースをかなり見ますが、このMTAを使うことにより治癒しているケースは想定より多いです。
2、スプリットパーフォレーション
根管充填を適切に行うために、歯の中を削ることを根管形成と言います。この根管形成時に、太すぎるドリルを使ったり、使う方向を誤る事によって生じます。治療は、通常に根尖孔を閉鎖してから、MTAセメントを使いストリップパーフォレーションの部分を閉鎖します。ただ、手技的には本来の根管と穿孔をしている孔が2つ存在する為に非常に治療が難しいのが現状です。上手く根管充填と、MTAセメントで根尖孔の閉鎖ができれば予後は良いですが、もともと根管内の歯質を削りすぎていますので、将来手的にこの部分の歯根が後に折れる可能性があります。
3、根管の側枝の閉鎖不全による根側方の病変
根管は絵にかいたような単純な形をしていません。曲がりくねっていたり、根管が枝分かれしている場合もあります。これを側枝(そくし)と言います。細い場合はあまり問題にならないですが、ある程度の大きさになると、この側枝の先端まで根尖孔と同じような扱いをして閉鎖する必要があります。この側枝の閉鎖不全により根の周囲に炎症を起こす事があります。レントゲンを見ると根の先ではなく、横の方に黒い影があると、大抵この側枝が原因なのが分かります。治療は、この側枝まで充填をすれば大抵治ります。しかし、現在日本で一般的に行われている側方加圧根充法では、ここまでを閉鎖する事は困難です。当院で行っている垂直加圧根充法である、ケースルクト法ではこの様な側枝に関してもしっかりと充填する事が出来ます。
4、根尖孔の閉鎖不全による根尖病変(根尖病巣)
これが、最も多いのが現状です。不具合の多くがこの根尖孔の閉鎖不全です。原因は側方加圧根充による根尖孔付近の空隙の存在である事が多いです。簡単にいうと、野の先まで完全に充填材が詰まっていないのです。治療は冠から土台、根管内の充填材をすべて取り去り、根管内を洗浄消毒のあと、根尖孔を垂直加圧根充法で閉鎖すれば8割は治癒します。しかし、この全てを除去するのは至難の業なのです。これらの根尖病変がレントゲン上で大きく見えた場合には、歯根嚢胞という臨床診断になる場合があります。これらの多くが抜歯や歯根端切除術となっているのが現状です。しかし、根管治療で治る場合も多いです。
5、根尖孔の過剰拡大と固形根充材の押し出しによる根尖病変
これは、根管治療が治らない場合に行われてしまう場合が多いパターンです。日本の根管治療の教育では、根管治療で治らない場合、根尖孔付近の細菌が原因だと考え、過剰に孔を広げてしまう場合があるのです。本来の根尖孔は0.1〜0.3ミリ程度なのですが、この根尖孔を1ミリ程度まで広げてしまう場合があるのです。そこに側方加圧根充で太めの固形の充填材を押し込むと、それが根尖孔から突き出してしまいます。同じような充填材の突き出しは垂直加圧根充でも生じますが、この場合、軟化した充填材が根尖孔を完全に塞ぎますので治癒に向かいます。しかし過剰拡大の根尖孔からの固形充填材の押し出しは、根尖孔の閉鎖不全を伴うので、長期に渡って痛みが続く傾向があります。治療はこのこの充填材を除去して根尖孔を垂直加圧根充で閉鎖する事で治ります。この場合、根尖孔から突き出した根充材を回収しなくても根尖孔の完全閉鎖を行えば治癒に向かう場合が多いです。
6、歯根破折
これは、根管治療後暫くして起こる場合が多いです。経験的にはどの部分の根にも起こります。多くの場合、症状があれば抜歯となります。予防としては、根管内を削る場合、必要最低限にするべきなのです。私どもの垂直加圧根充法である、ケースルクト法はその点を非常に重視しています。
痛み・トラブルがあれば、まずは受診を
根管治療は適切に行えば長い間、自分の歯で咬むことができます。私どもは、以下の様な事を診査して根管治療を検討します。
根管治療が初めての歯
- 自覚症状はどの程度があるか
- 痛みは? 咬めないほどなのか
- 歯の根が割れていないか、ヒビはないか
- 更に虫歯になっている場合、根のどこまで達しているか
- 根の数や湾曲具合はどうか
- セメント質剥離はないか
- 他の歯の状態はどうか
- 被せるだけの歯が残っているか
- 歯周病との関係はどうか
再度の根管治療の歯は上記に加えて
- 根尖孔付近の閉鎖状態はどうか?
- 前の治療で根管内は削られすぎていないか
- 根の中にどんな物が詰められているのか? それは外せそうなのか
- 被せものの土台にグラスファイバーが使われているか
- 根尖病変(根尖病巣)の形や大きさはどうか
- 再度の根管治療をした場合に強度低下を招くか
根の治療でお困りの方へ
「神経を抜いたのに痛む」「他院で抜歯と言われた」――そんな歯でも、根管治療で残せる場合は多くあります。お困りの症状があれば、まずは一度ご相談ください。