1、パーフォレーション(穿孔)
治療の際に、歯の内面から歯の外に向かって歯を削って穴を開けてしまうこと。歯の解剖学的な形態の把握不足の時に起こります。歯科用CTで歯を立体的に観察しておくことによりパーフォレーションは防げます。15年程度前までは、穿孔を起こすと予後不良で大抵は抜歯になってしまいました。しかし現在ではMTAセメントを使えばほぼ問題なく修復できる様になりました。穿孔直後でしか効果は無いかと思っていましたが、相当以前に穿孔しているケースにこのMTAを使ってもかなり有効であることが分かってきました。当院では、他院で穿孔したケースをかなり見ますが、このMTAを使うことにより治癒しているケースは想定より多いです。
参照ケース 症例25
参照ケース 症例44
2、スプリットパーフォレーション
根管充填を適切に行うために、歯の中を削ることを根管形成と言います。この根管形成時に、太すぎるドリルを使ったり、使う方向を誤る事によって生じます。治療は、通常に根尖孔を閉鎖してから、MTAセメントを使いストリップパーフォレーションの部分を閉鎖します。予後は良いですが、もともと削りすぎていますので、この部分の歯根が後に折れる可能性があります。
3、根管の側枝の閉鎖不全による根側方の病変
根管は絵にかいたような単純な形をしていません。曲がりくねっていたり、根管が枝分かれしている場合もあります。これを側枝(そくし)と言います。細い場合はあまり問題にならないですが、ある程度の大きさになると、この側枝の先端まで根尖孔と同じような扱いをして閉鎖する必要があります。この側枝の閉鎖不全により根の周囲に炎症を起こす事があります。レントゲンを見ると根の先ではなく、横の方に黒い影があると、大抵この側枝が原因なのが分かります。治療は、この側枝まで充填をすれば大抵治ります。しかし、現在日本で一般的に行われている側方加圧根充法では、ここまでを閉鎖する事は困難です。当院で行っている垂直加圧根充法である、ケースルクト法ではこの様な側枝に関してもしっかりと充填する事が出来ます。
参照ケース 症例48
参照ケース 症例50
4、根尖孔の閉鎖不全による根尖病変
これが、最も多いのが現状です。不具合の多くがこの根尖孔の閉鎖不全です。原因は側方加圧根充による根尖孔付近の空隙の存在である事が多いです。簡単にいうと、野の先まで完全に充填材が詰まっていないのです。治療は冠から土台、根管内の充填材をすべて取り去り、根管内を洗浄消毒のあと、根尖孔を垂直加圧根充法で閉鎖すれば8割は治癒します。しかし、この全てを除去するのは至難の業なのです。
参照ケース 症例14
5、根尖孔の過剰拡大と固形根充材の押し出しによる根尖病変
これは、根管治療が治らない場合に行われてしまう場合が多いパターンです。日本の根管治療の教育では、根管治療で治らない場合、根尖孔付近の細菌が原因だと考え、過剰に孔を広げてしまう場合があるのです。本来の根尖孔は0.1〜0.3ミリ程度なのですが、この根尖孔を1ミリ程度まで広げてしまう場合があるのです。そこに側方加圧根充で太めの固形の充填材を押し込むと、それが根尖孔から突き出してしまいます。
同じような充填材の突き出しは垂直加圧根充でも生じますが、この場合、軟化した充填材が根尖孔を完全に塞ぎますので治癒に向かいます。しかし過剰拡大の根尖孔からの固形充填材の押し出しは、根尖孔の閉鎖不全を伴うので、長期に渡って痛みが続く傾向があります。
治療はこのこの充填材を除去して根尖孔を垂直加圧根充で閉鎖する事で治ります。この場合、根尖孔から突き出した根充材を回収しなくても根尖孔の完全閉鎖を行えば治癒に向かう場合が多いです。
参照ケース 症例16
6、歯根破折
これは、根管治療後暫くして起こる場合が多いです。経験的にはどの部分の根にも起こります。多くの場合、症状があれば抜歯となります。予防としては、根管内を削る場合、必要最低限にするべきなのです。私どもの垂直加圧根充法である、ケースルクト法はその点を非常に重視しています。