根管治療とは

歯の構造は上記の様になっています。表面は硬いのですが、中には歯髄と言う柔らかい組織が入っています。治療等でその部分に触るともの凄く痛いので、通称は神経と言っていますが、血管も神経も細胞もあります。
歯が痛くなって、夜も寝られなくなるのは、歯の中に有る歯髄に細菌が虫歯や亀裂から感染してしまい、炎症を起こす事によります。この様な場合に、歯の中の歯髄(通称:神経)を取って、人工物に詰め替えて歯を残す治療を根管治療と言います。この治療の目的は、歯の中の歯髄(通称:神経)が有った空間を綺麗にして、再度感染しないように根の中を詰める治療です。
神経を取ったならば、歯はもう痛くなくなると思われるのが普通でしょう。その通りで歯にはもう痛みを発するセンサーが有りません。しかし、歯の周囲には感覚が存在する骨や歯周組織があります。そこの間に炎症が残れば、咬んで痛いような症状が残ります。つまり、歯の周りが痛いのです。
そして、この周囲に炎症を及ぼす最大の原因が、根の先にある根尖孔と言う小さい孔です。この孔をしっかり塞ぐ事が非常に重要なのです。しかも根管内を最小限に削るに留める必要があります。また、根管治療をした歯は少なからずとも強度が落ちます。
また、治療後のトラブルも増加しますので、できるだけ受けない方が良い治療です。よってこの治療を回避するには、痛くなるようになる前に治療をしておくことです。この根管治療の前の治療ならば、歯に何かを詰めて形と機能を回復することですので、それほどのトラブルは有りません。
日本の根管治療の現状
少しデータは古いのですが、2005年9月から2006年12月までの間に、東京医科歯科大学むし歯外来に来院された患者さんのレントゲンにおいて、根の先に陰がある患者さんの割合を調べた須田らの論文があります。それによりますと、全ての歯種によって5割以上に陰が存在していたと発表されています。陰が有ったからと言って、治癒傾向に向かっている場合も有りますので、直ぐに病変とは言えません。しかし、異常に高い数字で有る事は間違い有りません。私どもの敬友会で行った根管治療では後述しますが、この様な数字は有り得ません。
その原因はどこにあるのでしょうか。それは2つ有ります。1つは歯科医師養成期間である大学教育が古い考え方のままで有る事です。歯科系の養成大学や歯学部は国内に29あるのですが、国家試験で正しいとされている理論や方法以外を教える訳には行かない事なのです。よって独創的な根管治療の教育がされていない事です。そのために、日本での根管治療は40年前と殆ど変わっていません。
もう1つは、我が国の保険診療の問題があるのです。保険診療はある程度、医療機関の良心に任せる代わりに、非常に低い診療報酬に抑えられている点です。しかもその低さは根管治療に関しては発展途上国の診療費以下である事です。それが、簡単な治療なら良いのですが、とても難しく根気がいる治療なのです。
日本の根管治療は術後のトラブルが多いのか?
診療報酬の面を除いて、以下のような事が考えられます。
- 根管内の洗浄に重きを置くために、根尖孔の閉鎖は二の次とされている考え方。根尖孔の不確実な閉鎖が不快事項のかなりの原因と言う考え方をしていない事。
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日本では根穿孔の確実な閉鎖が出来ない側方加圧根充が教育の主体で有る事。垂直加圧根充を殆ど教えていない事。もしも的確な垂直加圧根充法に日本中の歯科医師が切り替えれば、トラブルは激減すると思われます。
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根尖孔を確実に閉鎖すれば、症状のある歯も治癒に向かう発想がない事。よって症状が有る歯は、ひたすら、根管内の薬の交換ばかりをする事をしていて、そのうちに雑菌の繁殖が激しくなり制御不能となり抜歯となるパターンが多い事。
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自費の根管治療においても、あるグループが治らない方式であるのにも関わらず、米国式根管治療として普及させている事。これらのグループの治療は、本来の根管治療では治らないので結局外科治療になること。
歯根嚢胞(しこんのうほう)は根管治療で治るか?
歯根嚢胞とは?
歯の根の先にできる病変です。歯髄(歯の神経)が正常なうちは絶対に生じません。歯髄が壊死してしまった場合や、一度根管治療を受けた歯の根の先にできます。これを根尖病変(根尖病巣)と呼びます。歯根嚢胞はこれらの根尖病変の一つです。
そして、歯根嚢胞はレントゲンでは根の先には、黒い影として写ります。
この他にも歯根肉芽腫と言われる場合もありますが、区別しようと思えば、抜歯等をしてその部分の祖s気を顕微鏡で病死診断をするしかありません。
多くの歯科医師は、歯根嚢胞がある程度の大きさになると、手術により摘出したり、抜歯が適当と判断します。又、のう胞が小さい場合でも手術や抜歯を勧められたと言って来院される方も多いです。
それでは、どんな場合でも治療が必要でしょうか?
実際は、レントゲンで根の先の黒い影を歯根嚢胞と臨床診断をするのですが、この様な黒い影は日本の場合、神経を取った歯には50%以上見られると言われています。ただ、この黒い影が、直ぐに悪さをするかと言えばそうとも言えないのです。
私ども敬友会の歯科医院では、症状がない根尖病変を何もせずに観察をしている例がかなりあります。それも10年単位で様子をみていますが、変化がない症例もかなり有ります。よって、根尖病変と思われる部分が小さく、症状が無い場合は、経過観察を行っていきます。
それでは、ある程度の大きさがあり、つまり5ミリ以上に程度になった場合には、手術や抜歯が必要なのでしょうか?抜歯となった場合には腫れや痛みは治りますが歯が無くなってしまいます。その後にはインプラントやブリッジ、義歯の様な見て目や咬み合わせの回復が必要になってきますので、抜歯は大問題です。
それでは放置は良いのでしょうか?痛みや腫れが有った場合には、感染をしていると思われるので、何らかの処置が必要になります。抗生物質を服用して治るかと言えば、一時的には症状がなくなりますが、原因は歯にありますので、又再発してきます。又、根の先あたりにレーザーを照射したなどと聞く場合もありますが、これも根本的な治療にはなりません。
それでは、抜歯や手術で歯根端切除術と言う根の先を嚢胞と一緒に切り取ってしまう以外に治療方法は無いのでしょうか?
実は、日本口腔外科学会のHPにも、この様に書かれています。「根管治療(歯の根っこの治療)で治癒することもあります。根管治療が奏効しない場合や根管治療ができない場合には、手術によって嚢胞の摘出を行います。」と記載されています。日本口腔外科学会の歯根嚢胞の説明についてはこちら
つまり、歯根嚢胞は根管治療でも治る場合があるのです。ただし、日本で一般的に行われている側方加圧充填法では、余程、運が良くないと治りません。しかし、私どもで行っているケースルクト法の場合、歯根嚢胞と思われる病変もかなり治してきました。
ただし、歯根嚢胞が根治療で治るかは、病理学的な証明は出来ないのです。つまり証明しようと思えば、ケースルクト法で根管治療をする前に、歯根嚢胞の部分の組織を外科的に取ってきて病理組織での確定診断を日宇町とするのです。しかし、その様な事をすれば、その外科的な刺激で治った可能性も否定できません。よって根管治療で治ったかを証明できないのです。
ただ、全ての歯根嚢胞の歯にケースルクト法で治療ができるかと言えば、その様な事はありません。ケースルクト法で治療ができないケースとしては
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一度治療をしてある歯で金属やグラスファイバーの土台が歯の中深くまで入っていて、外す事で歯がダメになりそうな場合。又は、歯に相当する部分を削って外す事に同意頂けない方。
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極端に動揺していたり、歯根が折れていたり、にヒビが入っていたりする場合
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既に歯根端切除術をされている歯
これ以外、特に、何も治療がされていない歯で、根の先に陰が発見されたと言うケースは歯根が割れて居なければ、根の先の陰の大きさにかかわらず、ケースルクト法で治る可能性は充分有ります。
よって、歯根嚢胞や、レントゲンで根の先に陰を指摘され、抜歯や手術と言われた方はご相談下さい。メスも何も使わない痛くない治療で、しかも1回から3回の来院で治癒する場合もかなりあります。以下にはその様な症例をかなり提示してありますので、ご覧ください。
もしも、その様な方でおかかりの歯科医院でレントゲンを貰っていましたら、メール相談に添付して頂ければ、治癒の可能性をある程度御説明いたします。ただ、申し訳ございませんが、相談多数のため。来院が可能な方に限らせて頂きます。
無料メール相談はこちら。
qakeiyuukai@gmail.com
ケースルクト法は、当法人の理事長の久保倉が考案し2018年に発表をした方法です。
K.SRCT法(ケースルクト法;Kubokura-Super-Root-Cnal-Treatment)
根管治療の方法としては、突飛な方法では有りません。
基本的な考え方は、「根尖孔を確実に閉鎖し、根管内からの色々な物質の根管外への漏出を防ぎ、生体にとって異物認識を解除させる」一番大事なのは、根尖孔の閉鎖と考える点が特徴です。その特徴は、日本で主に行われている側方加圧根充法ではなく、垂直加圧根充法を採用している点です。
このケースルクト法を開発するにあたって、基礎になったのは2つのテクニックがあります。それが、米国で専門医が行っている規格化された根管の中の形成方法であるCWCT法の規格化と言う考え方と、日本で40年ほど前に故、大津晴弘先生が発表された根尖孔の閉鎖方法であるオピアンキャリア法を組み合わせています。
つまり、日米の良い部分を組み合わせた方法なのです。
ケースルクト法の特徴としては、根尖孔を閉鎖できる最小限の根管内切削に留めている事です。これは、過剰切削による歯根破折を予防するためです。
この方法に関しては2020年の日本歯内療法学会で発表しました。又、クインテッセンス出版で発刊された「日本歯内療法学会がすべての歯科医師に送る最新トレンド」と言う本でも執筆をさせて頂いています。