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歯科医療と肝炎の感染

先程、テレビの番組を見ていて、驚きました。歯科の麻酔薬は今は、カートリッジ式になっていて、残ることもしばしば有ります。その残りを 他の患者さんに使っているなんて!
麻酔のカートリッジは底にシリコンゴムがついていてそこの場所を注射器のピストンに当たる部分が押すして先端に刺した注射針から麻酔薬が出るしくみになっています。そのシリコンゴムは弾性が有りますので、麻酔する時の圧力で少し容積が縮むのです。麻酔中には圧力をかけたり抜いたりしますので、力を抜いたときにシリコンゴムの容積が戻ろうとしてカートリッジ内が陰圧になって血液が逆流する事になるのです。

そんな訳で、一度でも、使用しますと、微量の血液がカートリッジ内に逆流します。それを他の患者さんに使えば、その逆流した血液を押しこむ事になる訳ですから、病気を移してしまう可能性が有ります。
当然に絶対にやってはならない事ですが、ご心配の方もいらっしゃると思いますのであえて言いますと、肝炎の血液が逆流したカートリッジを使いまわしすると全てが肝炎になるかと言いますと、そんな事は無いと思います。ウイルスは寄生虫みたいなもので単独では長くは生きてゆけないからです。つまりカートリッジの麻酔薬の中ではそんなに長くは生きていないだろうと思います。恐らく、逆流した血液入りのカートリッジを直ぐに次の者さんに使った場合が最も恐ろしいと思います。

番組では、C型肝炎の事を言っていましたが、それよりも移しやすいのはB型肝炎のE抗原がプラスの患者さんの血液です。これはエイズなんて比べ物にならない位に感染力がありますので、しばしば医療関係者が感染して不幸な転帰になる事があります。最も多いのは患者さんに使った注射針を自分の手に刺してしまう事故です。歯科の麻酔の針は極細で直接血管には刺しこんでいないのでそれなりにリスクは低いですが、採血した針や 点滴に使用した針を看護婦さんや麻酔科の先生が誤って刺してしまってB型肝炎になったと言う話は山ほど有ります。

こんな事は歯科医療施設としては常識的に知っている事だと思いますが・・・。
もう10年位前です、エイズ問題が起きはじめた頃に確か、厚生省と歯科医師会が主催して、全ての歯科医療機関が参加しなければならない講習会が地区別に開かれました。その中でも、この 麻酔薬カートリッジへの逆流はスライドで詳しく説明されていた記憶が有りますので、まあ、今時そんな事をしている医療機関はないと思います。

私の診療所では開業以来、例え1滴使っても、残りを他の患者さんに使った事は有りません。日本人の約2パーセントは肝炎と言われていますが、問診表で正直に言う人はまずは居ないと思っていますので、全ての患者さんがB型肝炎のつもりで消毒等に気をつけて診療しています。

余談ですが、麻酔をすれば診療費が高くなると思っている方も多いと思いますが、殆どの診療行為に対して、麻酔をしてもその手技の技術料や薬剤代を請求する事はできません。麻酔薬もアメリカの2倍近くもします。だからと言って使いまわしをして良い訳じゃありませんが、麻酔をするという事はそれなりのリスクを歯科医師は負う訳ですから、診療報酬もそれなりに与えるべきだと私は考えます。良心のみに支えられている行為(好意)は、どこかでほころびが来るものです。

最後に、感染症の講習会で講師が言っていた言葉ですが、「1人診療したら、その医院を全部焼いてしまって、次の患者さんの 為に、建てなおすのが感染予防では一番ですが、そんな事は無理なので、最低限、他人のタンパクを他人に注入しない事!! 」とおっしゃっていたのを今でも覚えています。(注:体液=タンパク)

 

<2001・5・1>



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