30年間以上前は人工サファイヤやガラス系、バイタリウムなどと言う金属が有りましたが現在では純チタンかチタン合金の物が殆どです。
チタン合金はロクヨンチタンが使われています。6パーセントのアルミと4パーセントのバナジウムを含んだ物です。純チタンよりも強度が高いです。
形のある物は必ず滅びますので永久にもつとは当然言えません。
しかし当院の統計では10年間持つ確率は95パーセント以上です。
ただこの数字は定期的なチェックを受けている患者様の確率です。
30年以上前はブレードタイプと言う板状のインプラントが有りました。しかし現在ではこのタイプは無くなりました。それに代わり円筒形かネジ状のタイプになりました。
ブレードインプラントは骨が細くても埋められる利点が有りましたが、やはりインプラント自体も細くなってしまいますので早期に折れてしまったりした為に使われなくなりました。もし強度が確保できる生体親和性の高い素材が今後開発されたら、再度脚光を浴びる可能性は有ります。
現在のインプラントはネジ状か円筒形なのでドリルで骨に丸い穴を開けてねじ込みます。
インプラントのドリルは規格化されています。つまり最終ドリルはインプラントの形とほぼ同じになっています。そのため余分に骨を削る様な事は有りません。
骨に接合していると考えて差し支えありません。しかし電子顕微鏡的には結合と言うより噛み込んで居ると言った方が良いです。
チタンは軽くて錆びない特徴があります。
あるメーカーのインプラントの破折は見た事があります。インプラントの首の部分が薄い物でした。現在では、販売されていない様です。
私が使ったインプラントでは一本も折れた経験は有りません。
しかし、インプラントは折れなくても接合部の部分が折れたものが2例ほどあります。ただインプラントは無事ですので、歯に相当する部分(上部構造)を作り替えて、再度使っていただきました。
これは、絶対にありません。細菌はチタンを食べることは出来ません。
近代のインプラントは、米国のリンコー先生の様な先駆者はいらっしゃいますが、チタン製のインプラントは、スウェーデンの整形外科医のブローネンマルク氏により約50年前に始まりました。
歯の成分に近いアパタイトを吹き付けたインプラント。骨に接合しやすいと言うものの、それほどの実感はありません。私は、現在では殆ど使っていません。
昔は材質の違いが有りましたが、現在ではほぼ純チタンかチタン合金。それも医療用のチタンを使っているので、違いはそれほど無いと思います。
一番の問題は、インプラントの太さの選択と、インプラントを埋める位置(ポジション)の方です。つまり術者の腕の方が大きな要因と考えられています。
3ミリ程度から6ミリ程度です。ただ4ミリ以下のインプラントはたわみやすいと言われています。そのため、奥歯に3ミリのインプラントを用いる事はしない方が良いです。一般的には5ミリに近い物が使えると安心です。
20年ほど前は、とにかく長いインプラントを使えと言われてきました。しかし現在では10ミリ。つまり1センチ有れば十分です。
ただし、長いインプラントは不要と言う訳でもありません。前歯の抜歯即時インプラント等の場合は、長いインプラントを使わないと、初期固定と言う「インプラントが骨の中にしっかり留まった状態」を作れない場合があるからです。
日本のメーカーも何社かあります。パイオニアとしてK社があります。
しかし、世界的に見ると日本のメーカーは海外では殆ど使われていません。
コンピューター制御の工作機械で、細長いチタンの鋼材を削り出して作ります。ほぼオートメーションで出来てしまいますので、大量生産が可能な様です。
ちなみにこの工作機器は日本製が多いそうです。
チタンは、化学的に安定ですので、溶けてしまう事はございません。
インプラントが骨と結合するのは、細胞レベルでの事です。よって、1~2パーセントは1回目の手術で骨と結合が得られない場合があります。これはどんなに経験を積んだ歯科医師でも有るのです。それをご了解の下にインプラントの治療を受ける必要があります。
15年前は抜歯をしてインプラントを埋めるのは、狂気の沙汰と思われていました。しかし、現在では、抜歯即時で埋めたのと、抜歯後、骨が出来てからインプラントを埋めるのでは、将来的な予後に差は無いとの研究が発表され、盛んに行われる様になりました。
米国の超有名なインプラントの先生も、以前は外側の骨が無ければ、抜歯即時インプラントはするなと言っていましたが、本年の米国審美歯科学会(2017年8月)では、骨を作る技を加えればOKと変わっていたのが印象的です。 抜歯をして穴が開いている所にインプラントを入れて何故に感染しないかと言えば、インプラントの周囲に取り囲まれる血液の塊の存在があります。これがインプラントを保護してくれるのだと考えられています。
逆に、抜歯をした部分にインプラントを埋めても、血液が周囲に取り囲まなかった場合は感染する事が考えられます。この様な場合は、腕から採血をしてインプラントの周囲に血液を入れておく必要があります。
大きく分けて、インプラントは2つの部分に分かれます。
天然の歯の歯根に相当する部分をフィクスチャーと呼びます。そして、口の中に出ている歯に相当する部分を上部構造と呼びます。
このフィクスチャーと上部構造を接合するのには、ネジ(スクリュー)を使う場合と、歯科用のセメントを使う場合が有ります。どちらが良いかと言えば、圧倒的にスクリューです。セメントを使った場合には、はみ出たセメントが歯肉とインプラントの間に残って、炎症を起こす原因になる事があるからです。
インプラントには、天然歯に有る「歯根膜」と言う構造がありません。
歯根膜は、天然歯を取り囲んだ薄い皮膜です。これはある種のショックアブソーバーとセンサーの役割があります。センサーとしては、これ以上噛むと歯が壊れるので、力を加減しろと知らせる機能です。グッと噛むと、何だか違和感が有ると思います。この違和感で歯を過度な力から守っているのです。
インプラントはどうでしょうか?結果的には、普通の歯と噛んだ感覚は変わらないそうです。そして歯根膜と言うセンサーがないからと言って、インプラントが壊れる事はまずありませんので心配ありません。ただ、歯がなかった所にインプラントが入り、反対側が天然歯だった場合に、噛みすぎて反対側の歯が折れるというような事には気を付けなければなりません。
有りません。
インプラントの位置は通常の歯列矯正の力をかけても不変です。つまり矯正治療により動かす事は絶対に不可能です。
インプラントはチタンと言う金属でできていますが磁力は帯びておりませんので、地場を利用するMRIには影響を与えません。ただし、普通の歯科用の金属が口腔内に入っているのと同様、レントゲン撮影をすると、その歯の周囲はアーチファクトと言う現象が起きて、しっかり見えないことがありますが限定的です。
通常は義歯をひっかける事はしません。
インプラントが横からの強い力を受けるのを嫌うからです。ただ、現実問題、骨や年齢の都合で、インプラントの上部構造(歯に相当する部分)に義歯を引っ掛けた事はあります。ただ、なるべくパカパカと動かないような義歯を作る事が肝要です。この場合はそれほど問題が無い事が多いです。ただし、推奨はしません。
上顎は半年、下顎はその半分と言われています。しかし、もう少し早いと思われます。特に、上顎は半年待たなくても良くなってまいりました。また、インプラントを埋めた時の留まり具合では、その日に仮の上部構造を装着する事も可能になってまいりました。
ただ、審美的な障害がなく噛むのに困らない場合は、仮歯によりインプラントに過度な力が及ばない方が良いので、仮歯を作らない事が多いです。
有ります。 それは下顎の前歯です。ここは骨の厚みが薄い方が多いからです。しかも骨の外側には、舌下動脈又は、オトガイ下動脈と言う、比較的大きな血管が走っているからです。
骨からドリルが貫通しない限りこれらの動脈の損傷は起きません。しかし無理な力をかけた場合等でこの動脈を損傷しますと、当然、出血をします。この部分には隙間が多くあり、血液が溜まって腫れるまで分からない場合があるのです。そして気道を圧迫する様になると呼吸困難に陥ったりします。この様な事は世界中でそれほどの例が有る訳では無く、ごく稀な話です。 ただインプラントの致命的な事故はほぼここの部位で起こっていると言われています。逆にこの部位以外は致命的な事故はほぼ有りません。
私どもでは、ここの部位にインプラントを行う場合には、術前、術中に必ずCTを撮って方向を確認して安全に行っている事は言うまでもありません。