骨の火傷
インプラントを埋める場合、生理食塩水で骨を冷却しながら行いますが、ドリルの回転数が速かったり、押し付けたりした場合に、骨の温度が上がってしまい火傷になってしまいます。実際には、骨の温度が42度を超えると骨の火傷を生じます。こうなりますと、骨は吸収されて、その部分に軟らかい組織が(炎症性肉芽組織)生じ、インプラント周囲から膿が出るようになったりします。こうなるまでの期間はインプラントを埋めてから2~3ヶ月程度で1年経ってから起るものではありません。又、レントゲンを撮ってみると、インプラントの周囲に骨が連続的に無くなっている状態がわかりますので、診断はつけやすいです。これは、圧倒的にインプラント初心者に見られる現象です。なぜならば、骨の硬さ等はドリルを伝わってくる振動で判るのですが、初心者には、その感覚はありません。又、骨は均一な物体ではないのです。ある所は硬く、ある所は軟らかいのが骨なのです。その様な骨を相手に火傷をさせない様にするのは、この手に伝わってくる熟練的な感覚が大事なのです。
感染
私がインプラントを始めた20年前は、1にも2にも感染を防止せよと言われ、とにかく掃除しやすい形のインプラントの埋め方や冠の形が要求されていました。しかし、そこまでしなくても、臨床的にはそれほど問題が無い事がわかってきたので現在ではそれ程言われなくなりました。でも、不潔にしておくと、インプラントと歯の境目から、細菌が進入して骨の破壊等も考えられます。ですから、インプラントの周囲は常に綺麗にブラッシングをしておかなければなりません。
歯に相当する部分が欠ける
10年経過するうちにこれは避けて通れないかもしれません。通常の歯の場合、グッとかみ締めると少々痛いと思います。これが歯根膜のセンサー機能で、これ以上咬むと歯が壊れますと教えてくれているのです。しかし、インプラントにはこの歯根膜がないので、いくらでも咬めてしまうのです。よって歯に相当する部分に審美性を考慮してセラミックスや強化プラスチックを使用した場合には、欠けてしまう事があるのです。その場合に対処できるように、歯に相当する部分はもう一度外せる様な構造にしておくのが一般的です。
インプラントの反対側の歯がダメになる
インプラントを下顎に入れたなら、その反対側の上の歯がダメになる事もあります。健全な歯ならその様な事はありませんが、歯槽膿漏になって歯が動いていたり、根が折れそうになっている部分の反対側にインプラントを入れた場合に、今までチカラがかからなかったので何の症状も無かったのですが、チカラがかかるようになると症状が出ることもあります。この様な事を避ける為にも、口の中、全体の事を考えてインプラントの治療計画を立てると共に、インプラントを埋めた後の定期健診も大事と言えましょう。
インプラント自体がダメになる
無理な設計。
本来なら、数を埋めなければならないところに、少ない本数しか埋めない場合。代表的なのは、オールオンフォー(All- on- 4)。これは歯の全く無い土手に、4本のインプラントを埋めて、その上に歯を乗っけてしまう方法です。一日で仮歯まで出来てしまうのでワンデーインプラントとも言われています。ダメな点は、インプラントの数が少ないのと、傾斜して埋める為にどうしてもインプラントや顎の骨に無理がかかる点や精密な技工(上の歯の部分の工作精度)が出来ないのが問題なのです。
実際にアメリカではかなり問題が起こってきていると聞きました。ここでは、名前は出しませんが、世界的に有名な某教授によると、一般的なインプラントの成功率は、95%以上なのに対して、これは71%。科学的な根拠も乏しいそうで「絶対にやるな!!」とおっしゃっていました。