治療する部分だけを露出させるマスクの様なものです。
ラバーダム
子供のラバーダム
正式には「ラバーダム防湿」といいます。
ラバーダムは歯科治療における一つの手技です。歴史は古く、19世紀から有る様です。その主な使い道としては、「レジン充填」「根管治療」「小児歯科」の分野です。
「レジン充填時」
コンポジットレジンという、プラスチックの中にセラミックを混ぜた充填材を歯に詰める時に使います。ラバーダムの役目は主に、防湿。つまり呼気が歯に付かないようにするためです。ただし、以前よりはコンポジットレジンの物性が良くなり、それほど防湿をしなくても良くなってきました。
「根管治療時」
根管治療は歯内治療と呼ばれる様に歯の中の治療です。それは歯の中の根っこの中の治療です。いわゆる神経を取ったあとの治療の事です。
口の中には、3000億個とも5000億個とも言われる細菌が住んでいます。そして、唾液1mlの中にも1億もの細菌が居ると言われています。根管治療においては、この唾液中の細菌を極力、治療中の根管内に入れないようにします。その理由は、治療部位の歯の中への細菌感染の防止の為です。ただ、細菌が根管内に入ってしまえば、もう終わりでは有りません。しっかり洗浄をして、しっかりと根尖孔の閉鎖をすればそれほど問題は有りません。そもそも根管内にはかなりの細菌に汚染されています。もしもラバーダムをしないで、根管内に細菌が入ってしまったら治療が不可能でしたら、細菌に汚染された根管は治らない事になってしまいます。その様な事はなく、実際に治ります。
世の中の歯科医院のHP(ホームページ)にはラバーダムをしてさえ治療をすれば予後は良いような記載が多く見られますが誤りです。
ラバーダムをしても暴力的に根の先を治療器具で突いてしまったり、歯の内面を削り過ぎたり、根管充填に側方加圧根充法を採用した場合には予後の悪い場合が多いです。
つまり、ラバーダムは基本的な事であり、根管治療の手技の方が大きく歯の生存率に影響を与えます。
当院としては、根管治療時はラバーダムはした方が良いと思っています。しかし、それは術者の治療をしやすくする程度であり、予後にはほぼ関係無いと考えています。
実は、世界中のラバーダムに関する論文でも明確な有効性を示す証拠は有りません。
「小児歯科」
小児の口は非常に狭いです。しかも唾液の分泌量が多く、高湿度の環境です。この様な状態の中では、歯に何かを詰めても外れてしまう事が多いのです。そこでラバーダムで防湿。歯だけを口腔内から隔離する必要が有るのです。
防湿以外にも、メリットは有ります。ラバーダムをしたほうが良い典型的なケースは、乳歯同士の歯の間が虫歯の場合です。
この場合ラバーダムをしないと、直ぐに詰めた樹脂が脱落すると言って差し支えないと思います。
ラバーダムをしないと、レジンと言う樹脂を詰めようと思っても唾液が歯に侵入してきて、レジンの接着を阻害します。また、ラバーダムをした場合は、歯の間に入ったラバーダムが歯肉を押し下げる為に、ラバーダムを掛けない場合より削れる範囲が広くなります。また、歯肉を触っても出血しなくなります。出血も唾液と同じく、レジンの接着を阻害します。
よって子供の歯の充填治療にラバーダムは必須と私どもは考えています。つまり予後に大きく影響を与えます。ただし、子供の歯にラバーダムを装着するのは、スタッフの技術が必要になります。

注意しなければならないのは、ラバーダムの中で嘔吐をした場合のそなえです。嘔吐物による窒息が小児の歯科治療中の事故につながる事があるからです。パルスオキシメーターを指につけて、呼吸が 抑制されていないか監視する場合もあります。
一番大事なのは、ラバーダムをつけたら、スタッフが目を離さない事だと思います。