恐らく30代以上の歯科医はコンポジットレジンは歯髄に対して刺激性が有り深い”かどう”は、覆髄をしなければならないと、思っている方が多いはずです。しかし、現在では、その常識が、かなり非常識になりつつ有ります。ここでは、某大学の保存修復学教授による講演会より最新の研究に基づく情報を紹介いたします。
コンポジットレジンについて
講演会より
- コンポジットレジンの未重合のモノマー歯髄に対して刺激作用は認められないそうです。動物実験にて証明されたそうです。
- 古いタイプのレジン充填では、冷水痛を生じたのは、重合収縮等により、充填後、”かどう”から少しはがれて、(コントラクションギャップ)そこの隙間より細菌等の感染が起きる為だったそうです。ですから、最近のレジンでは、重合収縮の改善や、樹脂含浸層をつくり強固に接着させること、ボンディング材の改良により、冷水痛は生じなくなった様です。
- 燐酸によるエッチングも歯髄に対する影響は無いそうです。アメリカでも以前より大論争であったそうですが、今ではこの考えが定着してきたそうです。3M社のマルチパーパスも本国アメリカでは、マレイン酸では無く、燐酸が入っているそうです
- う蝕下部の透明象牙質の象牙細管は閉塞しており仮にレジンに刺激作用が有ったとしても、覆髄する必要は、無いそうです。ダイカル等不要
- 樹脂含浸層というものは、結構電子顕微鏡で見ると結構”すかすか”だそうです。
- 某社の水洗不要のプライマーは世界でも最も進んだ製品ですが、象牙質には今までの常識を覆しかなり強固に接着するそうですが、エナメル質には以外とくっつかないそうです。ほかの講演会でもこの様な事は聞きました。(サーマルサイクル試験後切片を作る時、エナメルの部分はレジンが外れてしまうそうです。)エナメル質には燐酸エッチング後プライマー処置をして、レジン充填をするのが、一番くっつくそうです。
- 若年者より老人の方が接着力は強いそうです。
- 20年前位の初期の製品に比べ接着力では、現在の最も進んだ製品で約15倍程度の接着力があるそうです。1平方センチメートルに対して最大300キログラムの引っ張り強度があるそうです。
- コンポジットレジンは日本の製品が世界でも最も進んでいるそうです。(某社の水洗不要プライマー)
私の経験より
- 面倒くさがらないで、2級のコンポジットレジン充填では必ずトッフルマイヤーのマトリックス他を巻く事。
- 楔も入れること。できれば、木製が良い。
- 面積の広い充填後は、ボンディング材を塗布するか、シーラントを辺縁に塗布してリーケージを予防する事。
- 楔状欠損の充填では必ず咬合調整をする事。
- シーラントには燐酸エッチングを用いること。水洗不要のプライマーでは接着力弱い。
- クランプをかけた歯の2級の充填は、マトリックスが引っかかるので、隣接面の下部でオーバーになりやすいので、注意する事。
- ラバーダムはなるべく色つきを使うと良い。
- 最近のボンディング材には、フィラーを含むものが、多いので、光の照射の前に、マトリックスや、ストリップスを巻いておくこと。
1996/4/26記入
追加記入:99年現在ではセルフエッチングプライマーよりウエットボンディングの方が、エナメル質に対する接着性は高いと思われますので、どうしても、エッチング後に水洗しにくそうな症例以外は、3M社のウエットボンディング材を使っています。
追加記入:2004年現在、ウエットボンディングは、コントラクションギャップを起こす為か、術後に咬合痛が出るケースが有ったために使用中止。 象牙質の多い”かどう”には、EDTAとGM処置。そして2液性のボンディング材を試用。これは確かに良いようです。意外に、特許切れで、ドバッと発売 されてきた、1液性のボンディングも、メーカーの選択を誤らなければ、結構、接着する様です。ただ、結果が出るのは、5年先でしょう。
追加記入、2020年現在、レジンの物性はかなり完成に近づいた様に思えます。大事なのは術者の方ではないでしょうか。やはりしっかりやろうと思えば、マイクロスコープを使わないとしっかりできないと思います。