
今までは、ここを穴埋めするのに適した材料はありませんでした。なぜかと言うと、骨に抜けている歯の穴は出血などにより、濡れていたり、湿っていたりして通常のセメントではしっかり接着しなかったからです。厳密に言うと、スーパーボンドと言う接着剤も濡れている環境でも接着はしたのですが、詰めにくいと言う欠点がありました。ところが、このMTAセメントは詰め込む事が簡単にできるのです。
しかし、日本での薬事承認は直接覆髄と言って、歯の中に使う事により取得されました。
開発はアメリカのロマリンダ大学のイラン出身Dr.Mahamoud Trabinejadによります。
成分は、酸化カルシウム(CaO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等に二酸化ビスマスを配合したものらしい。つまるところ、工業用のポルトランドセメント(普通のコンクリート)と成分は殆ど変わらないそうだ。ただ、この工業用のコンクリートにはヒ素の様な有害成分も含まれていますし、粒子も荒いので歯科用のMTAセメントとは別物と考えて良いでしょう。
このMTAセメントは、滅茶苦茶に高いのです。工業用のポルトランドセメントは10キロでも500円位ですが、このセメントは1グラムが約7千円もします。この値段が凄く問題なのです。この値段では保険診療で使う事は事実上無理なのです。
なぜならば、穴を埋める事に関しての保険の診療報酬はありませんし、もしも覆髄に使ったとしても診療報酬は1880円(2018年現在の保険点数)で全ての処置をしなければなりません。
つまり健康保険の場合は、安価な水酸化カルシウムを使わざるを得なく、MTAセメントは自費診療でしか使用できないのが現状です。叉、混合診療との関係もあり、このセメントを使う場合は、これに付随する診療行為も全て自費でするようにされています。