側方加圧根充法と垂直加圧根充法の違い
根の中に充填材を押し込む方法には、上記の様に2種類あります。
側方加圧充填の場合、ガッタパーチャと言う樹脂の棒に固体のまま糊をつけて、根管に沢山詰め込み側面から押す方法です。下の写真のちくわにキュウリを詰め込むイメージです。
それに対して、垂直加圧充填の場合は根管の中に挿入したガッターパーチャーを根の先の方に向けて押す方法です。下の写真のちくわに溶けたチーズを詰め込むイメージです。そして多くの場合は、ガッタパーチャを熱します。こうする事で流動性を増しますので、根尖孔を緊密に充填できるのです。
ガッタパーチャは熱で半固体になり、冷めると硬化する性質を持っています。この性質のお陰で根尖孔と根管内を緊密に充填できるのです。しかし、側方加圧根充法はこの良い性質を全く使いません。どう考えても良い方法ではありません。
垂直加圧根充法の種類
オピアン法
日本で開発された方法。ガッタパーチャを火に一瞬あぶり、更にユーカリ油につける事により半固体にして詰め込み、器具を使い垂直にガッターパーチャを押す方法。根の先の孔の根尖孔の閉鎖はピカイチ。しかし、この方法の原法はロングダイアモンドバーと言う切削力の高いバーで根の中を削るために、歯の内面を削りすぎて、強度を落とすと共に、歯の外への穿孔等のトラブルが多発する。よって、現在は廃れてしまった。しかし、後述の当院で行っているケースルクト法の基礎になっています。
Continuous Wave Condensation Technique (CWCT法)
この方法は、側方加圧根充に用いるガッタパーチャーよりも太いガッタパーチャを1本だけ根管内に入れます。そしてレントゲン撮影をして根管内での位置確認を行います。それが良ければ、ヒートプラガーと言う、瞬間的に200度程度になる針の様な器具をガッタパーチャーに接触させます。そしてガッタパーチャを根管内で軟化させます。更にプラガーと言う器具で、根尖孔に向かって垂直的に加圧する事で、ガッタパーチャーを根尖孔および、根管内に充填する方法です。
この方法は主に米国の根管治療専門医が用いています。日本では米国式根管治療と呼ばれている場合が多いです。
側方加圧根充法に比べれば遥かに良い方法です。しかし、ヒートプラガーの扱いが難しいのです。それは一番大事な根尖孔付近のガッタパーチャまで軟化が出来ない場合が多いのです。しかも根管内で200度を発生させますので、根管内で時間をかけすぎると歯の周囲に火傷を起こすことも多いです。そして、ヒートプラガーの都合上あまり長い歯にはこの方法を用いることは出来ません。
当院でもこの方法は15年前までは採用していましたが、現在では成功率の高い、ケースルクト法に全て切り替えています。(保険診療の場合は、ケースルクト法に準じる方法)
Hydraulic Condensation Technique
この方法は上記のCWCT法と途中までは同じです。しかしヒートプラガーでは、ガッタパーチャを熱しません。その代わりにバイオセラミックシーラーと言う生体親和性のある糊でガッターパーチャの隙間を埋めると言う方法です。
いわば、側方加圧根充のガッタパーチャを太いのに取り替えて、隙間を埋める糊を高級なモノにしただけの感じです。
側方加圧根充法よりも少し良いと思いますが、CWCTやケースルクトよりは予後が悪いのは予想が付きます。なぜならば、ガッタパーチャを熱していないからです。それにより根尖孔の閉鎖はいい加減だからです。
K.SRCT法(ケースルクト)
僭越ながら、理事長の久保倉が開発した方法。根の中の削り方はCWCT法の良い部分を採用しています。そして根充方法はオピアン法の考えを採用した方法です。歯の中(根管内)を削りすぎない、かつ、根の先の孔である根尖孔の閉鎖に優れている方法です。
当院で採用している方法です。尚、歯科医師のより採用している方法が異なることはありません。