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鋳造修復

投稿日: 2023年9月5日  | カテゴリ: 院長ブログ

歯の治療で、虫歯で欠けてしまった部分が多い場合、本来の歯に替わる人工材料で被せる治療があります。


専門的にはクラウン(冠)と呼びます。


このクラウンの材料は金属やプラスチック、セラミックなどがあります。


このクラウン。日本では、相変わらず銀色をしたクラウンがスタンダードなのです。


この、銀歯を作る方法が鋳造なのです。鋳の字は鋳物を表します。つまり金属を溶かして鋳型に流し込んで作っているのです。この方法は歯科医療では鋳造修復と呼ばれています。


これの作り方を簡単に説明します。先ず削った歯を粘土のような材料で型を取ります。それに石膏を注ぎ込み、歯型を作ります。今度はその模型の上に溶けた蝋を盛って歯の形に彫刻をします。これが出来たら、耐火石膏の中に埋めてから高温で熱します。すると蝋の部分が溶けて空洞ができます。この空洞の中に、溶けた金属を鋳込むのです。この際には遠心力を利用します。そして、完成するまでに最短でも丸一日かかります。


上記の様に複雑な工程があり、人がやらなければならない事ばかりなのです。よって、エラーが入り込む余地が沢山なのです。しかも、材料が金属なので歯科用のセメントが接着しにくい欠点もあるのです。


40年前は、この方法が最先端でした。

そして、この方法以外にクラウンは作れませんでした。


しかし、現在はデジタルの時代です。当然ながら、全てデジタルでクラウンを作れる時代になりました。つまり、型取りも専用のビデオカメラで削った歯をスキャンニングをして読み取ります。そして、パソコンに取り込んだデータからクラウンを設計します。そのデータをもとにセラミックなどを機械が10分程度で削って完成します。この方法ですと、全工程、つまり型取りのスキャニングから削り出しのミリング工程まで30分で終了です。当然仮歯など不要ですし、鋳造修復よりも適合の良いクラウンが出来ます。ただ、現在のところこの様な方法は保険適応にはなっておりません。 


この方法ですが、実は真新しいシステムではないのです。

開発したのはドイツで、もう35年以上前なのです。ただその頃は、パソコンの能力や削り出しのマシンの性能も低く、使い物にならなかったそうです。


しかし、現在に至ってはもっと正確なクラウンを作る事が出来る様になっています。

小机歯科では、このシステムを10年前から運用しています。ただ、10年前のクラウンの適合性や形態は、現在は大きく改善されています。それは、ソフトウエアのバージョンアップによります。


問題は、この様な良いシステムがあるにも関わらず、歯科大学や歯学部の教育は、未だに鋳造修復を教えていて、デジタルは殆どやっていないのが現状なのです。


どうしてなのでしょうか?


その一つは、教育機関にこのデジタルのシステムを導入しようとすれば、多大な設備投資が必要になるからです。


このデジタルのシステムは、歯型を読み取るビデオカメラとソフトウェア、更にセラミックなどを削るミリングマシンが必要になります。その合計は最低でも一千万円程度かかります。そして、学生2人にワンセットとすると、どんな大学でも二億五千万円程度はかかってしまうでしょう。これを全国のすべての大学で足並みを揃えて整備するのは、自力では困難だと思われるのです。


なぜ、全国一律に行わなければならないかと言うと、歯学教育における、文部科学省が提示しているコアカリキュラムがあるからです。


つまり、デジタルを教えるとすれば、このコアカリキュラムを変える必要があります。そして、カリキュラムを変えれば、設備も更新する必要があるのです。そして国家試験というシステムにも関わります。


更に、最大のネックは、全国の歯科医院の設備も替える必要があります。

削り出しのミリングマシンは置かずスキャナー部分だけにしても、最低でも五百万円位がかかります。これを自力で買える歯科医院はある程度の規模に限られるとおもわれます。


ただ、国も金属を使った鋳造修復はやって欲しくないのです。それは、歯科用のキンバラと言う金属には12%の金を含んでいるからです。そして、昨今の金1gが10000円もする様になってしまったからです。ですから、数年前からコンポジットレジンのブロックを使った、CAD/CAM冠というクラウンを保険診療に入れたのです。


よって、この時代遅れを変えるのは、政治主導の思い切った予算措置と旗振り役が必要になると思うのです。それをやる人が居ないので、ずっと昔のままの教育になっているのだと思います。 


でも、誰かがやらないと日本の歯科医療は世界から取り残されてしまうでしょう。



コロナで、全国の飲み屋さんの休業保証に毎月百万円近くも払った事を考えれば出来なくは無いでしょう。


次回は、時代遅れの根管治療の教育について書きます。

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