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接着性と言う事

投稿日: 2016年12月2日  | カテゴリ: 院長ブログ

歯科医療において「接着」と言う概念が欠かせません。

レジンと言うような“歯に直接詰め込んで固めてしまう様な治療”に関しては、接着と言う概念は重要視されているのに対して、“被せ物の治療”に対しては接着と言う概念はかなり疎かにされてきました。

疎かにされてきた理由は、被せ物の治療に使用される材質です。
その材質とは、従来から金属が使われてきました。
現在も使われていますが、金属は基本的には接着剤がつきにくいのです。

一般常識としても鉄と鉄を接合する場合、接着剤でくっつけようとは思わないですね。
溶接をするか、穴を開けてリベットやネジで接合すると思います。

では、歯科医療の金属製の被せ物はどうしているのでしょうか?

被せ物の材質は金属で無機物。
歯は有機物。
この2つの性質が違う物質を接着させるには、かなりの無理があるのです。

そこで基本的に重要視されてきた概念は「嵌合(かんごう)」です。
つまり「はめ込む」のです。
日本建築の、釘を使わないで嵌め込んで建物を作るのと同じ考え方です。
そこでは、接着剤はあくまでも補助。

金属の場合この「嵌合」が上手くできれば良いのですが、中には歯の高さが無い場合や、噛み合わせにより横からの揺さぶりが強い場合などには、容易に外れてしまうのです。
また、外れはしなくても接着剤が溶解してしまい、金属冠の中に唾液が回り込んで治したはずの歯が再度虫歯になってしまうのです。

セラミックの冠はどうでしょうか。
セラミックは大きく分けて、3種類あります。
セレックに代表される長石系セラミック、イーマックスに代表される二珪酸リチウム等、そして、ジルコニア等のセラミックです。
これら3種類のセラミックの性質は非常に異なります。

この中で、長石系と二珪酸リチウムは接着剤と強固に結合します。
また、接着剤自身も歯と強固に結合します。
そのため、この2つのセラミックは、一度歯に接着させてしまうと、金属冠の様に切れ目を入れて、マイナスドライバーの様なもので捻って外すことはできません。
外すには、削り取る以外は無いくらい一体化してしまいます。
そのため、金属よりも遥かに歯の治療に向いているのです。

特に、奥歯の治療で歯の高さが無い時、金属を使った「嵌合」が出来ない場合があります。どうしてもその歯を残そうと思えば、歯の中の歯髄(神経)を取って歯の根の中に金属を差し込む治療方法が取られてきました。
しかし、これこそ歯をダメにする元凶なのです。
何故ならば、歯の中に金属を差し込んで「嵌合」を得るために、結局はそれが楔(クサビ)となって歯が折れてしまうからです。

それに対して、この長石系セラミックや二珪酸リチウムは、奥歯で歯の高さが無い様な場合や歯の面が真っ平らでも、接着することでピッタリと張り付きます。

実際、私はこの様なケースの治療を沢山手がけましたが、金属で治療すれば翌日にでも外れてしまいそうなものが、セラミックを用いた治療を行うことで、数年経過しても割れもしなければ外れもしないケースが殆どでした。

それでは、セラミックの中のジルコニアという素材はどうでしょうか?

これは、金属に近い性質を持っているセラミックです。
よって接着剤が付きにくいと言う性質は引き継いでおります。
米国の審美歯科学会では「シランカップリング」と言う処置を推奨していましたが、日本では、シランカップリングよりも「サンドブラスト」と言う表面を多少ですがデコボコにする処置を推奨している場合が多く見受けられます。
まあ、どちらの処置にしても接着剤が苦手です。

ただ、とても良い性質もあります。
このジルコニアと言う素材は、光を通しにくいのです。
その性質は、前歯に使った時に特に発揮されます。

仮に、前歯の歯の色がかなり黒っぽく変色しているとします。
この変色してしまった歯に、何かを被せて歯の色を回復させるとします。
通常、神経を取ってしまった歯の場合は、漂白(ブリーチング)の様な処置をして元の歯の色を変えてから被せることがあります。

しかし、神経が有る歯の場合「テトラサイクリン」の様な薬物での歯の着色は、ホワイトニングをしても色が変わりにくいので、被せ物をして色を回復させる場合が多いのです。
その際に求められるのは、中身の色の映り込みが少ない方法です。
色の映り込みが少ない方が、歯の色を綺麗に再現が出来るのです。

ジルコニアは色の映り込みが非常に少なく、下地の色が透けて見えにくいです。
それでいて、金属の様な黒っぽい色ではなく白いので、その表面に「陶材」と言うセラミックを乗せて焼くとほぼ歯と同じような色の被せ物を作る事ができるのです。
以前はこのジルコニアの代わりに金属が使われていましたが、この金属の色自体が黒く見えてしまったりするため、歯と同じような被せ物を作るのは非常に困難を極めたのです。

ただ、ジルコニアで作ると問題を起こし易いのが、奥歯のブリッジです。
ブリッジとは、歯が無くなってしまった両側の、残った歯を削って橋を渡す治療方法です。

何故、このジルコニアで作ると問題が有るのでしょう。
それはブリッジの土台の片方が、歯から接着が外れてガタガタとする場合が多いからです。ガタガタすると言っても、もう片方の歯が接着剤で付いていますので、ブリッジは見かけ上は外れてはいません。
問題は、ガタガタする方は唾液がジルコニアの冠と歯そのものの間に回り込むので、知らず知らずの間に中で虫歯が進んでしまうことです。

どうしてその様な事が起きるのでしょうか?
それは、ジルコニア自体が接着剤に付かない性質の他に、削り出しと言う方法で作られているからです。
ジルコニアはかなり硬い材質です。
これはブロック状で供給されていて、これをドリルで精密に削って加工します。
この加工には、コンピューター制御のCAD/CAMマシンを使います。

このCAD/CAMですが、色々な種類の調整はできるのですが、ドリルの幅よりは細かく削れないという欠点を持っています。
そのため、出来上がってくる物は金属で作ったブリッジよりゆるく、カパカパ。
つまり「嵌合」する力はあまり期待できないのです。
その様な性質のものをつきにくい接着剤で歯に装着するので、暫くするとどちらか片方が外れてきてしまうのです。

bridge1202.png

そこで「接着剤にくっつきやすい長石系セラミックを使えばブリッジもOKでは」と思われる方も多いのではないのでしょうか。ところが、この長石系セラミックはブリッジにするには強度が足りないのです。
つまり、接着はできてもブリッジの橋の部分がポキッと折れてしまいます。
ブリッジに出来る素材としては、ギリギリ二珪酸リチウム(Eマックス)までです。
しかし、これも咬む力が強い人に使うと、やはり折れてしまう事があります。



私は、基本的にはブリッジによる治療は好みません。

なぜならば、前記の様な事が起こるとともに、元々、個々に動く歯を固定してしまいますので、長年経過するとブリッジ自体が動いてしまい、一度にダメになるケースを多く見てきたからです。

 bridge1202_02.pngジルコニアの場合、ブリッジを作ると、この様に片方だけ外れてしまうことがあります。

現在ではブリッジにはせずに、歯のない部分はインプラントにして、両側の歯は削らない治療方法をお勧めしています。

前歯の色を治すのに「ラミネートべニア」と言う方法があります。
これは、いわゆる「付け爪」の様な治療法です。
このラミネートベニアをジルコニアで作った場合ですが、やはり接着剤がジルコニアには付きにくいので、剥がれやすいのは否めません。

また、セラミックと言う素材は、金属の延長線上には有りません。
つまり金属で歯を治すのとは、まったく違う概念が必要なのです。
そこを歯科医師自身が理解せずに治療を行っている場合も多い様です。
簡単に言うと、セラミックによる治療は歯の削り方一つをとっても、金属とはまるで違う削り方をする必要があります。
そして、セラミックによる治療のカギを握るのは、内面処理と接着剤の選択です。
せっかくセラミックを使った被せ物を使っても、金属用の接着材料を使ってはまったく意味がありません。

このセラミックと言う材料が歯科で本格的に使われ始めて、まだ10年経過していません。
しかし、非常に速い速度で進歩をしてきています。
現在、次々と新しいセラミックが、かなりの種類出てきています。
恐らく近いうちに、ジルコニアの様に光が透過せず、歯と同じ様な色で、しかも強度があり接着剤にも非常によく付く新しい素材が必ず出てくると思います。

長石系セラミックを代表するセレック。
被せ物を使った治療でも、1日で治療を終える事が出来ます。
これは、少し前までは夢の治療でした。
しかし、今では技術革新により実現されました。

私達は「この様な新しい技術に遅れをとらない歯科医院でありたい」といつも考えています。

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