セレックの予後から考察 デメリットは?
セレックは長石系の「セラミックス素材」です。
これは、言ってみれば「茶碗の親戚の様な素材」です。
この様な素材でやはり心配なのは、割れたり外れたりしないか、という事だと思います。
809症例の中で98.7%が良好
そこで、敬友会の「小机歯科医院」と「くぼくら歯科医院」でのセレックの予後を調べてみました。
セレックを導入したのが、2015年4月。
それから2017年の1月末までの22ヶ月間に2医院でのセレックを使った治療は975例。
そのうち歯全体に被せた症例が809例(約83%)でした。
この975例のうちに、外れた症例は一例もありませんでした。
それでは、欠けたり割れたりした件数はどうでしょうか。
その件数は12件でした。
その内訳の部位は、1例を除いて、全てが最後方に位置する奥歯でした。
つまり、小臼歯での破折件数は0件、ということです。
22ヶ月間ですので、経過時間はバラバラですが、12/975=1.23%と言う事になります。
つまり98.7%はこの期間では割れていないのです。
時間の経過と共に、この数値は多少上昇すると思いますが、かなり低い数字だと思います。
従来の金属クラウンは23%にトラブル
平成19年に発表されている北海道大学の論文によると、金属で作られた冠(クラウン)の脱離等の率(外れる率)は、3年間で23%と言う報告があります。
つまり「金属の被せ物は3年以内に4本に1本は外れる」という事です。
セレッククラウンの破折率:2年以内で1.23%
金属のクラウンの脱離率:3年間で23.00%
上記を見てもお分かりのとおり、セレックのトラブルはかなり少ないですが、トラブルが発生するとすれば破折(割れる)します。
金属の冠のトラブルとしては、かなり高頻度で外れます。
この違いは何かと言うと、セレックは接着材で歯と強固に接着していますが、金属の被せ物ははまり込んでいるだけで、殆ど接着材で接着していない事を意味しています。
外れる金属冠、かけてしまうセラミック
欠けるのと、外れるのではどんな違いがあるのでしょうか。
一見すると、外れたものはもう一度入れなおせば済む様に感じますが、多くの場合、金属冠が外れた中は2次カリエスと言ってむし歯になっている事が多いのです。
これは、歯とクラウンを接着材で「接合」しないので、外れる前に内部が蝕まれてしまうのです。
そのため、外れた冠はそのまま再装着は出来ずに更に歯を削る必要がでてしまうのです。
場合によっては、神経を取らなければならないケースもあります。
それでは、セレックの様に欠けてしまった場合はどうでしょうか。
欠けるのはセレックの部分だけですので、基本的には歯の内部に虫歯が存在している2次カリエスはありません。
つまり、冠の部分だけをやり直せば元に戻る事が殆どです。
と言う事は、やはりセレックの方が優れていると結論付けをして良いと思います。
セレックのデメリットとは?
ただ、セレックにも問題が無いわけではありません。
セレックの場合のトラブルは前述の様に破折ですので、やはりセラミックの厚みが必要なのです。
一方、金属の場合は、厚みはそれほど必要ありません。
こう書くと、セレックは多くの歯を削られるのに対して金属はあまり削らなくて良い、と考え金属の方が勝る様な気がします。
しかし、よく考えてみて下さい。
セレックはセメントによってほぼ完全に歯と一体化してしまうので、例え歯を削ったとしても、もう一回歯が蘇る様なものです。
それに対し、金属は接着材で接合しないので、歯との間に一定の隙間が有るのと同じなのです。
問題は「慣れていない歯科医師が、セレックを作るのに金属の冠を作るのと同じ量だけ歯を削って作ってしまうと、破折率が高まる」ということです。
セレックにはセレックの歯の削り方をしなければならないのです。
しかし、長年金属を使っていると、削り方の癖が抜けません。
セレックの様なセラミックの治療は、かなり専門的にやっていないとトラブルが多くなってしまいます。そして、上記の様に厚みはかなり均一にしないとならないので、マイクロスコープの様な拡大下で歯を削る必要が有ります。
奥歯の一番奥には向きません。この歯は一番、力がかかります。この部分に用いたセレックは経年的に割れる傾向が高い様です。よって、現在ではこの部位にはセレックはお勧めしていません。(2022年追記)
セレックのメリット
セレックのもう一つの長所をご紹介しておきましょう。
一般的に、歯の生え方はお顔の形にかなり依存しています。
細長い顔をした「弥生人系の人(ドリコフェーシャル)」の場合は、咬む力が弱くなりますので奥歯の歯の高さは高い傾向があります。
それに対し、四角い顔をした「縄文人系の人(ブレーキ―フェイシャル)」の場合は、咬む力が強くなりますので、歯の高さは低い傾向にあるのです。
歯科治療を行う上で問題になるのは、この縄文人系の人の場合です。
このタイプの方は奥歯に歯の高さが有りませんので、被せるような治療を金属で行うと、あっという間に外れてしまう事があります。
そのような場合は、歯の中の歯髄(神経)を取って、歯の中に杭を刺して被せ物を作る必要があるのです。
しかし、セレックの場合、この様な高さが無い歯、つまり殆ど平らな場合でも接着材で接着する事ができますので、歯髄を取る必要がなくなりました。
そして、もう一つ。
現代人は、昔と比べて歳を取っても歯はかなり残っています。
そこで起こるのが「歯が割れる事」なのです。
歯髄が有っても割れる事があります。
歯茎の内部で折れてしまう事も多々あります。
あまり深い所で折れてしまった場合は抜歯になってしまいますが、それほどでもなければセレックで治療を行うととても予後が良いです。
セレックは折れた部分の歯茎を電気メス等で焼いて、その場でビデオで型を取れますので、あの粘土状の型取り材で型を採るより正確に型取りができるのです。
又、金属の場合は、当然数日間の作成期間を要しますので、電気メスで焼いた部分も治ってしまっており、再度、焼く手術までしなければなりません。
それに比べセレックの治療は1時間で終了しますので、電気メスで焼却した部分もそのままで、綺麗に装着する事が出来るのです。
最後に・・・
金属は歯にくっつかない。
嵌まり込んでいいるだけ。
セメントはあくまでも補助。
だから又、虫歯になることが多い。
しかし、セレックはセメントと非常に良く接着する。
しかもセメントは歯ともとてもよく接着する。
セレックは、セメントによって歯と一体化が図られるので、また虫歯になる事が少ないのです。
それと、同じセレックでも、作る機械のソフトウエアによって相当な違いが出ます。削る機械は同じでもソフトウエアのバージョンによって大きく歯に対する適合性が違うのです。2015年当時のソフトウエアよりも2022年の最新ソフトウエアで作った被せ物の方が遥かに良いものが出来上がります。
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